檜扇(日扇)
檜扇はアヤメ科の宿根草で、日本三大祭の一つ、京都の祇園祭では、期間中商家や町屋の軒先や床の間に檜扇を飾る風習があります。檜扇の名前の由来は、葉の出方が檜を薄く削った板を糸で綴じて出来た扇(宮廷人が持つ檜扇)に由来しているという説や、花が鮮やかな緋色をしていると言う事から(緋扇→檜扇)となった説などがございます。
京都の生け花で主に使われるのは、茎の反りのある「黄竜」(黄色花)と「真竜」(橙色花)です。檜扇の実として出回っているのは主に達磨檜扇(ほとんど反りがない)です。
古来、中国で檜扇は「日の出のように赤い」花が終わると「真っ黒な種」(ぬばたま)を結ぶと言う事で「昼が終われば、夜が来る」という「日、月(陰陽)」の循環を象徴する植物とされたようです。「穢れの発生の根本は陰陽の乱れによる」と考えられ、檜扇は、その乱れを直す植物とされたと考えられます。特に種子である「ぬばたま(うばたま)」が魔除け、邪気除けの効力があると信じられていたようです。そして、祇園祭が元々は疫病を流行らせている怨霊の怒りを鎮めるために始められたことから、魔除けに使われた檜扇は欠かせないものとなったと伝えられています。
花材としては江戸時代にすでに広く利用され、立花図にも多く記されています。 主な生産地は徳島県神山町と京都府宮津市がありますが、徳島県神山町ではピーク時には70軒の農家さんがおられましたが、現在では10軒にまで減少し、京都府宮津市も同様で現在は6軒の農家さんのみとなり、今後益々希少な花になっていく事が想像されます。